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B型肝炎の再活性化、重症化に注意:HBV、抗がん剤、免疫抑制療法、分子生物学的製剤、ステロイド、劇症肝炎

疾病の治療のため、抗がん剤、免疫抑制療法、分子生物学的製剤、ステロイド等を使用した免疫抑制下でのB型肝炎ウイルスの再活性化が最近問題になってきております。劇症肝炎で死亡に至るケースも報告されています。

B型肝炎ウイルス(HBV)自体に肝細胞毒性はありません。HBVに感染した肝細胞がウイルス関連性高原を表出すると、感染細胞を排除しようとする免疫応答システムにより肝障害(肝炎)が発症します。

HBVの臨床経過ですが、母子感染によるHBVキャリアの自然経過を例に説明いたします。
① 免疫寛容期:若年期には免疫応答が生じないためウイルスが増殖し、血中のHBV-DNAが高値となる。この時期に肝炎は発症しない(無症候性キャリア)
② 免疫排除期:20〜30歳の頃には慢性肝炎を発症し、ウイルスの増殖は抑制され血中HBVは若干低下します。
③ 免疫監視期:慢性肝炎の経過で、ウイルスの遺伝子変異が起こり、血中HBV-DNAは低値となります。そして免疫寛容を獲得すると肝炎が消退し、落ち着いた状態になります(非活動性キャリア)
④ 寛解期:高齢になるとHBs抗原も陰性化し、HBs抗体ができる場合があります。
以上のように分類することができます。
この中で、HBV再活性化で最も注意払わなければならないのが免疫監視期の既往感染者になります。
免疫監視期の既往感染者の診療にあたっては、以下の点にご留意する必要があります。

snake免疫監視期の患者様でも、HBs抗原陰性例が認められることから免疫抑制療法を開始する前には詳細なHBV感染の評価が必要になります
snake免疫抑制治療開始後も、厳重なHBV評価が必要になります
snake免疫抑制中に肝炎は発症しませんが、免疫抑制離脱期に肝炎が発症します

以上のことから免疫抑制/化学療法によるHBV再活性化には対策が必要と考えられ、厚生労働省の研究班は2009年に「免疫・抑制療法により発症するB型肝炎対策GL(ガイドライン)」が作成されました。
2014年に改訂された日本肝臓学会のGLでは、HBV-DNA量が20IU/mL(2.1log copies/mL)以上になったら核酸アナログを投与するとされています。
モニタリング間隔については、免疫抑制療法では、治療開始または変更後6カ月間は1カ月ごと、その後は治療内容を考慮して期間を検討するとされています。

医療従事者ならびにHBV既往感染の患者様は、自身の受ける医療(治療)に常に注意を払い、HBV再活性化に注意し安全治療の遂行に心がけたいものです。

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