便秘の定義とは
便秘は、患者様によって症状が多様であるがゆえ、その定義も各種団体によってさまざまです。日本消化器病学会関連研究会「慢性便秘の診断・治療研究会」編集の『慢性便秘症診療ガイドライン』においては、「本来体外に排出すべき便を、十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。便秘は有病率が高く、ありふれた病気なので軽視されがちですが、その裏には重大な病気が隠れているかもしれません。ただの便秘なのか、それとも病気のサインなのかを判断するため、ぜひ便秘外来をご利用ください。
便秘の症状について
- 排便の回数が少ない
- 排便後にすっきりしない
- いきまないと排便が困難
- 便の硬さや形、色の変化
- 痔や血便の経験がある
- 下腹部の不快感や腹痛、膨満感
- 冷えやむくみ、肌荒れ
上記のような症状が現れ、検査・治療が必要になる状態を「便秘症」と言います。便秘症は、老若男女問わず起こり得る病気で、生活の質の低下につながるだけでなく、恐ろしい合併症を招くこともあり、まさに「万病のもと」なのです。長引く便秘によって、腸閉塞や大腸がんといった命に関わる病気を発症する可能性も高まりますから、いつものことと放置せずに、早めに専門医に相談しましょう。
便秘の主な原因
便秘の原因は、便が作られる過程や排便の仕組みに障害があって起こる「機能性便秘」と、腸そのものの病変によって起こる「器質性便秘」に大きく分けられます。日常的にみられる便秘の多くは機能性便秘で、直腸に便が停滞する「直腸性便秘」、大腸の運動機能が低下する「弛緩性便秘」、大腸の過緊張による「けいれん性便秘」の3つのタイプがあります。
まずは、自分の便秘のタイプを理解した上で、正しい治療と生活習慣の改善が必要です。器質性便秘の場合は、腸の腫瘍・炎症・閉塞など、原因となる疾患を治療しなければ改善することはなく、早期発見・早期治療が非常に重要になります。
便秘の診断・検査
当院では、便秘の症状にお悩みの患者様に対して、医師による問診・診察・触診などを行った後、必要に応じて腹部エコー・レントゲン、大腸内視鏡検査、腹部CT検査(提携医療機関)、血液検査などを行っております。検査内容は患者様によって異なり、大腸がんなどの重篤な器質的疾患を除外することを目的としています。
便秘の治療
検査後、腸の病変が確認された器質性便秘の患者様には、速やかに高度医療機関をご紹介いたします。機能性便秘の場合には、生活習慣が深く関わっているため、食生活を含めた生活指導に加えて、薬物療法として患者様に合った便秘薬を処方しております。便秘薬には実に多くの種類があり、市販の薬で対処される方も多いですが、誤った薬の使用は症状を悪化させかねません。便秘薬は、症状や体質によって合う・合わないがありますから、必ず医師に相談して決めましょう。
便秘の解消・予防のために
便秘の解消は薬に頼るだけでなく、日々の生活習慣や食事の改善も非常に有効です。毎日の生活に少し工夫を加えて、健康で快適な毎日を手に入れましょう。
注意点
日常生活の注意点
- 規則的な排便の習慣をつけるために、朝食後はトイレに行くようにする。
- 腹部を温めて腸の血流を増やし、腸の動きを良くする。入浴時の腸のマッサージや、腹巻、カイロ、温灸なども効果的。
- 適度な運動によって、内臓の動きを活発にさせる。
- ストレスを上手に解消する。ストレスにより、交感神経と副交感神経のバランスが乱れると、腸の活動が低下しがちです。
食事の注意点
- 規則正しい3度の食事を摂ることで、身体のリズムを整える。
- 水分を十分に摂る。水分が少ない便は硬くなり、頑固な便秘につながります。
- 便の量を増やしてくれる、食物繊維の多い食事を心がける。
- 適度な脂肪摂取によって腸粘膜を刺激し、スムーズに便が排泄されるように働きかける。
- 腸内環境を整えるために、ヨーグルトなどから善玉菌を摂取する。