感染性胃腸炎:ノロウイルス
皆さんも一度は耳にしたことのあるノロウイルス。感染性胃腸炎の原因となるウイルスの1つです。
ノロウイルスの他に感染性胃腸炎の原因となる病原体には、代表的なものにカンピロバクター/ジェジュニ/コリ、腸管アデノウイルスなどがあります。
今回は皆さんの関心の高い、ノロウイルについてお話ししたいと思います。
ノロウイルスは、1年を通して発生する感染性胃腸炎で、12月〜3月の特に冬季に流行のピークを迎えます。
感染力がとても強く、手指や食品などを介して経口で感染し、人の腸管で増殖し、嘔吐や下痢、腹痛などを引き起こします。
健康な人は軽症で回復しますが、乳幼児や高齢者、寝不足が続いたり、疲労が溜まっているなど、免疫力が低下している人が感染すると重症化したり、誤って吐物を気道に詰まらせてしまうと死に至る危険もある病気です。
ノロウイルス基本データ
潜伏期間
感染から発症まで24〜48時間
主な症状
吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、微熱など。通常これら症状が1〜2日続いた後、治癒し、後遺症はありません。
また、感染しても発症しない場合や軽い風邪ののような症状の場合もあります。
乳幼児や高齢者は、嘔吐物を吸い込むことによる肺炎や窒息にも注意が必要です。
症状が軽快しても、3〜7日間は糞便中にウイルスは排泄されて続けますので感染拡大に留意してくだいさい。
感染経路
ノロウイルスの感染経路はほとんどが経口感染と言われています。食品も重要な感染源の一つです。
ウイルスに感染した食品取扱者(食品の製造等に従事する者、飲食店における調理従事者、家庭で調理を行う人などが含まれます)を介して食品が汚染されたことが原因となっているケースが多いと言われ、原因食品が特定できない要因ともなっています。
過去のノロウイルス食中毒の調査結果を見ても、食中毒事例の7割は原因食品が特定できていません。
その他の原因としては、ノロウイルスに汚染された二枚貝があります。二枚貝は大量に海水を取り込み、プランクトンなどのエサを体内に残し、出水菅から排水していますが、海水中のウイルルも同様のメカニズムで取り込まれ、ウイルスが体内で濃縮することから原因食品となりやすいと考えられています。殊に生食される牡蠣などは注意が必要です。
その他には
患者のノロウイルスが大量に含まれる糞便や吐物から人の手などを介して二次感染した場合
家庭や共同生活施設など人同士の接触する機会が多い所で、人から人へ飛末感染等直接感染する場合
ノロウイルスに汚染された井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取した場合
などが考えられます。
検査/診断
通常の場合、臨床症状や周囲の感染状況等から、総合的にノロウイルスと原因と推定して診療がなされていることが多いと考えられますが、このウイルスによる病気かどうかは、臨床症状からだけでは特定できません。
「ノロウイルス抗原検査」は、糞便中のノロウイルスを検査キットで検出するもので、3歳未満、65歳以上の方を対象に健康保険が適用されます。
この検査は結果が早く出るメリットはありますが、ノロウイルスに感染していても結果が陽性とならない場合があり、ノロウイルスに感染していないことを確かめる検査にはなりません。
より確実な検査方法は、ウイルス学的な診断です。患者の糞便や吐物を用いて、電子顕微鏡法、RT-PCR法、リアルタイムPCR法などの遺伝子を検出する方法でウイルスの検出を行い診断します。
こうした方法による検査は、通常医療機関で行うことはできず、食中毒や集団感染の原因究明などの目的で、行政機関や研究機関等で行われています。
治療
ノロウイルスに効果のある抗ウイルス薬はありません。このため、通常は対象療法が行われます。特に体力の弱い乳幼児、高齢者は、脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないように、水分と栄養の補給を十分に行いましょう。脱水症状がひどい場合には病院で輸液を行うなどの治療が必要になります。止瀉薬(いわゆる下痢止め薬)は、病気の回復を遅らせることがあるので、自己判断では使用しないことが望ましいでしょう。
予防
食事の前やトイレの後などには、必ず手を洗いましょう。
手洗いは、手指に付着しているノロウイルスを減らす最も有効な方法です。
ノロウイルス等の食中毒予防のための適切な手洗い
https://www.youtube.com/watch?v=z7ifN95YVdM
下痢や嘔吐症状のある人は、食品を直接扱う作業を行わないようにしましょう。
ノロウイルスに感染した人の糞便や吐物には大量のウイルスが排出されます。大量調理施設の食品取扱者がノロウイルスに感染していると、大規模な食中毒につながります。
胃腸炎患者に接する人は、患者の糞便や吐物を適切に処理し、感染を広げないようにしましょう。
ノロウイルスは感染力が強いため、環境(ドアノブ、カーテン、リネン類、日用品など)からもウイルスが検出されます。感染者が発生した場合、次亜塩素酸ナトリウム(を使用しましょう。ただし、次亜塩素酸ナトリウムは金属腐食性があり、リネンや衣類を脱色するので注意して使用し、消毒後の薬剤の拭き取りを十分にするよう注意してください。
家庭用の次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤(ハイター)でも代用できます。使用に当たっては「使用上の注意」を確認しましょう。
加熱が必要な食品は、中心部までしっかり加熱しましょう。
一般にウイルスは熱に弱く、加熱処理はウイルスの活性を失わせる(失活化)有効な手段とされています。ノロ ウイルスの汚染のおそれのある二枚貝などの食品の場合は、中心部が85°C~90°Cで90秒以上の加熱が大切 です。 ノロウイルスの失活化に必要な加熱条件については正確な数値はありませんが、同じようなウイルス(A型肝炎 ウイルス)では、85°C以上で1分間以上の加熱を行えば、感染性は失活するとされています。
●調理台や調理器具は一般的な感染症対策として、消毒用エタノールや逆性石鹸(塩化ベンザルコニウム)が 用いられることがありますが、ノロウイルスに対してはあまり効果が期待できないといわれています。
ノロウイルスを完全に失活化する方法としては、次亜塩素酸ナトリウムや加熱による処理が必要です。調理器 具等は洗剤などを使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度 200ppm)で浸すように拭くこと でウイルスを失活化できます
●まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等は熱湯(85°C以上)で 1 分以上の加熱が有効です。
●二枚貝などを取り扱うときは、専用の調理器具(まな板、包丁等)を使用するか、調理器具を使用の都度洗浄、 熱湯消毒する等の対策により、他の食材への二次汚染を防止しましょう。
ノロウイルスに関して一通りお話しさせていただきました。感染を予防し、冬を楽しく乗り切りましょう。
もっと詳しく知りたい人は
厚生労働省/ノロウイルスに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html
手洗いの手順・リーフレット
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/dl/link01-01_leaf02.pdf