SGLT2阻害薬とNFLD:非アルコール性脂肪性肝疾患(NFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
現在は、C型肝炎は経口薬である直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)で90%以上が治ります。
B型肝炎に関しても核酸アナログ製剤でウイルスを抑制できる時代です。
最新の医療はウイルス性肝炎を克服しつつあります。
その一方で、近年の肝機能障害の原因疾患として注目を集めている疾患が
非アルコール性脂肪性肝疾患(NFLD)
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)
なのです
肝臓の脂肪変性を背景に肝機能が障害され、繊維化、発がんの報告もある疾患ですが、比較的新しい疾患概念であり有効な治療がまだ確立されていません。
現状では病態の単一因子での説明はなされておらず、遺伝子などの患者因子と生活習慣を含めた環境因子の複合要因で発症するのでは、と考えられています。
しかるにNFLDの治療は生活習慣などの併存疾患の治療が重要になるわけです。
しかしながら、実臨床では肝機能障害があるため、積極的な薬物治療ができないジレンマに陥ることが多々あることも事実です。
種々のお薬がNAFLDに効果的であるとの報告があるわけですが、最近の報告で目を引いたのが、
糖尿病の治療薬であるSGLT2阻害薬がNFLD患者様の肝機能を改善する
との報告です。
第24回日本消化器関連学会週間(JDDW 2016)で朝日クリニックの井谷俊夫先生より発表されています。
研究では糖尿病で肝機能障害を持つ患者様にSGLT2を投与した前向き研究で、3ヶ月の投与でAST, ALT, γ-GTPの優位な低下が確認されています
私どもも糖尿病の患者様に投与する機会の多いお薬ですし、安全で使いやすいお薬であるとの印象を持っています。
確かに糖尿病の患者様で肝機能障害をお持ちの方はある程度の割合でいらっしゃいます。そのような患者様には積極的に使っていくべきお薬になるかもしれませんね。
糖尿病の患者様に限らず、この研究がNFLDの標準治療開発のヒントになるといいなあと思います