肝硬変の寿命は?余命を延ばすための治療方法について解説
肝硬変と診断されると、「寿命はどのくらいなのか」「これからどうなるのか」と強い不安を感じる方は多いでしょう。
実際の寿命は、肝臓の状態や病気の進行度、合併症の有無、治療内容、日々の生活習慣によって大きく変わります。
そのため、余命の数字のみにとらわれるのではなく、適切な治療を続けることが大切です。
この記事では、肝硬変の寿命と治療方法について詳しく解説します。
余命を延ばすためのポイントもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
肝硬変で腹水が溜まったときの余命は約2年

肝硬変は症状の進行によって『代償性肝硬変』と『非代償性肝硬変』の2つに分けられます。
肝硬変で腹水がみられる場合、病状が進行した非代償性肝硬変の段階に入っていると考えられるでしょう。
この段階になると肝臓が本来持っている働きを十分に保てなくなり、体にさまざまな症状が現れます。
報告されているデータでは、腹水を伴う非代償性肝硬変の余命は約2年とされています。(中央値)
(参考:Palliative care and end of life care in decompensated cirrhosis)
ただし、この数字はあくまで統計上の目安であり、すべての人に当てはまるわけではありません。
肝硬変の原因や重症度、合併症の有無、治療内容によって予後には個人差があります。
ここでは代償性肝硬変と非代償性肝硬変に分けて、症状と生存率について解説します。
代償性肝硬変の症状と生存率
代償性肝硬変は、肝臓が硬くなる変化は起きているものの、肝臓の働きはまだ保たれている段階です。
肝硬変の重症度を表す『Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類』で、グレードAに当たるのが代償性肝硬変です。
この段階では自覚症状がほとんど出ないことも多く、あっても疲れやすさや軽いだるさなど、日常の体調不良と区別しにくい場合があります。
腹水や黄疸といったはっきりした症状は現れにくいため、病気に気づかずに過ごしている人も少なくありません。
生存率に関するデータでは、代償性肝硬変の5年生存率は72.3%と報告されており、比較的良好な経過が期待できる段階です。
(参考:肝硬変の予後-肝表面像による検討)
ただし、肝硬変は少しずつ進行する病気であり、治療や生活管理が不十分だと非代償性肝硬変へ移行する可能性があります。
そのため、定期的な検査を受け、医師の指示に従って治療を続けることが大切です。
非代償性肝硬変の症状と生存率
非代償性肝硬変は、肝臓の機能が大きく低下し、体に明らかな症状が現れる段階で、重症度ではグレードB・グレードCにあたります。
代表的な症状には、腹水・浮腫、黄疸、肝性脳症などがあります。
腹水はお腹に水が溜まることで張りや息苦しさ、食欲低下を引き起こし、日常生活に強い影響を及ぼす症状です。
この段階に入ると生存率は大きく低下し、腹水がみられる患者さんの5年生存率は53.3%、10年生存率は24.0%というデータもあります。
また、非代償性肝硬変の余命は約2年とされることが多く、予後は良いとはいえません。
ただし、これらは過去の統計に基づくデータであり、治療方法や全身の状態によって経過は変わります。
適切な治療や肝移植などにより、症状の軽減や生存期間の延長が期待できる場合もあります。
肝硬変の寿命は適切な治療によって延ばせる

医師が告げる余命は、肝臓の状態や検査結果をもとにした統計的な目安であり、将来を決定づけるものではありません。
実際には、その後の治療内容や生活習慣の見直しによって、経過が変わるケースもあります。
さらに肝硬変によって腹水などの症状が出ていても、内科的な治療により改善される場合も多いです。
肝硬変は進行性の病気ですが、医師と相談しながら向き合うことで、症状を抑えながら生活の質を維持できます。
余命の数字だけにとらわれず、今できる治療に取り組む姿勢を持つことが大切です。
肝硬変による腹水の治療方法

肝硬変による腹水の治療方法には、内科的治療と外科的治療の2種類あります。
それぞれの治療の種類は以下の通りです。
| 内科的治療 | 塩分制限利尿薬の内服アルブミン製剤の投与肝機能に影響する薬の制限 |
| 外科的治療 | 腹水穿刺腹水濾過濃縮再静注法(CART)経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術(TIPS)肝移植 |
ここでは上記の治療方法についてそれぞれ解説します。
内科的治療
肝硬変によって腹水がみられる場合、まずは内科的治療から始めるのが一般的です。
適切な治療を行うことで腹水の量が減り、症状が落ち着く場合があります。
主な治療方法は以下の4つです。
- 塩分制限
- 利尿薬の内服
- アルブミン製剤の投与
- 腎機能に影響する薬の制限
ここでは上記4つの治療方法について解説します。
塩分制限
塩分制限は、腹水治療の中でも基本となる治療方法です。
肝硬変では体内にナトリウムが溜まりやすくなり、その影響で腹水も増加しやすくなります。
基本的には、1日の塩分摂取量を5〜7g程度に抑えるよう指導される場合が多いです。
加工食品や外食は塩分が多くなりやすいため、できるだけ避け、薄味の食事を心がけることが大切です。
塩分制限を続けることで、腹水の減少が早まったり、利尿薬の量を減らせたりする場合があります。
利尿薬の内服
塩分制限だけでは腹水が十分に改善されない場合、利尿薬の内服が検討されます。
利尿薬は、尿の量を増やすことで体内に溜まったナトリウムを外に出しやすくする薬です。
肝硬変による腹水治療では、まずは少量から始めて、体の反応を見ながら調整していく場合が多いです。
自己判断で中止や増量をせず、必ず医師の指示に従って服用しましょう。
アルブミン製剤の投与
アルブミンは主に肝臓で作られるタンパク質で、血液中の水分バランスを保つ役割を持つものです。
肝硬変が進行するとアルブミンの量が減り、腹水やむくみが起こりやすくなります。
このような場合、アルブミン製剤を投与することで症状が改善される場合があります。
腎機能に影響する薬の制限
腹水がある場合、普段服用している薬の見直しも必要になります。
特に腎臓の働きを弱める薬などは、腹水治療の妨げになることがあります。
例えば、一部の痛み止めや血圧を下げる薬は、状態によっては注意が必要です。
そのため腹水が生じている場合は、自己判断で薬の服用を続けるのではなく、必ず医師に相談しましょう。
必要に応じて薬の種類や量を調整することで、腎臓や肝臓への負担を減らし、腹水の改善につながる可能性があります。
安全に治療を進めるためにも、現在使っている薬を正確に伝えることが重要です。
外科的治療
内科的治療を続けても十分な効果が得られない場合は、『難治性腹水』と診断され、外科的治療が必要になります。
主な外科的治療の方法は以下の通りです。
- 腹水穿刺
- 腹水濾過濃縮再静注法(CART)
- 経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術(TIPS)
- 肝移植
ここでは上記4つの治療方法について解説します。
腹水穿刺
腹水穿刺は、お腹に針を刺し、溜まった腹水を体の外に出す治療です。
強いお腹の張りや息苦しさがある場合に行われることが多く、症状を比較的早く和らげられる点が特徴です。
処置は局所麻酔で行われ、超音波の機械を用いて安全な箇所を確認しながら針を刺します。
1回に排出する量は最大でも8L程度で、1〜2週間ごとに処置を行うケースが多いです。
ただし腹水と一緒に体に必要なたんぱく質であるアルブミンも失われるため、体力の低下を引き起こすという課題があります。
そのため、一定量以上の腹水を抜く場合は、アルブミンの補充も併せて行います。
腹水穿刺は対症療法であり、根本的な原因を排除するものではないため、繰り返し処置が必要になる場合がある点も理解しておくことが大切です。
腹水濾過濃縮再静注法(CART)
腹水濾過濃縮再静注法(CART)は、腹水穿刺で取り出した腹水をそのまま捨てず、専用の機械で処理して体に戻す治療です。
まず腹水を体外に出し、細菌などを取り除いたうえで、必要なたんぱく質を濃縮します。
その後、点滴として体内に戻すことで、栄養分の損失を抑えられるという治療方法です。
自分の体にあったたんぱく質を戻すため、薬剤によるアレルギー反応が起こりにくいメリットがあります。
経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術(TIPS)
経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術(TIPS)は、首の血管から細い管を入れ、肝臓の中で血液の通り道を作る治療です。
肝硬変では、肝臓の中を流れる血液の圧が高くなり、その影響で腹水が溜まりやすくなります。
そこで門脈と肝静脈をつなぐ通路を作ることで、圧力を下げる効果が期待できます。
肝移植
肝移植は、肝硬変そのものを対象とする治療方法で、腹水の原因を根本から改善できます。
重度の非代償性肝硬変で、他の治療では十分な効果が得られない場合に検討される方法です。
肝移植には脳死肝移植と生体肝移植があり、どちらも限られた医療機関で行われます。
移植を受けるまでに待機期間が必要な場合もあり、誰でもすぐに受けられる治療ではありません。
ただし、移植が成功すれば、腹水を含む多くの症状の改善が期待できます。
肝硬変の寿命を延ばすために意識すべきポイント

肝硬変の寿命を延ばすためには、以下のポイントを意識することが大切です。
- 断酒を続ける
- 規則正しい生活を心がける
- 合併症の治療を行う
ここでは上記3つのポイントについてそれぞれ解説します。
断酒を続ける
肝硬変の原因がアルコールである場合は、断酒を続けることが重要です。
たとえ少量のアルコールであっても、すでに弱っている肝臓にとっては大きな負担となります。
そのため、「少しなら大丈夫」と考えず、完全に断酒しましょう。
断酒を続けることで、肝臓の炎症が落ち着き、肝機能が保たれやすくなります。
家族や医療スタッフのサポートを受けながら断酒を継続することで、少しでも長く穏やかに生活できるようになるでしょう。
規則正しい生活を心がける
肝臓をいたわるためには、規則正しい生活を心がけましょう。
まず食生活では、腹水やむくみを防ぐために塩分を控えつつ、栄養バランスの偏りを防ぐことが大切です。
肝硬変の方は筋肉量が落ちて栄養不足になりやすいため、無理な食事制限は避け、医師や管理栄養士などの指導を受けながら食生活を整えましょう。
体力に余裕がある場合は、1日30分程度の有酸素運動を取り入れるのもおすすめです。
ウォーキングや水泳など、続けやすい運動を習慣にすることで、体力の維持にもつながります。
合併症の治療を行う
肝硬変では、腹水以外にもさまざまな合併症が起こる可能性があります。
代表的なものに、肝性脳症や食道・胃静脈瘤、肝臓がんなどがあり、いずれも放置すると命に関わることがあります。
そのため寿命を延ばすためには、合併症を早く見つけ、適切な治療を行うことが重要です。
定期的に検査を受けることで、異常を早期発見しやすくなります。
合併症の治療は肝硬変そのものの進行を抑えることにもつながるため、症状が軽いうちから医師と相談し、継続的に治療を受けることが大切です。
肝硬変の寿命に関するよくある質問

肝硬変の寿命に関するよくある質問をまとめました。
- 肝硬変で酒をやめないと余命はどのくらい?
- 肝硬変の末期症状は?
ここでは上記2つの質問についてそれぞれ解説します。
肝硬変で酒をやめないと余命はどのくらい?
肝硬変の余命は状態によって異なりますが、飲酒を続けることで寿命を大きく縮めてしまいます。
アルコールは肝臓に直接負担をかけるため、肝硬変の状態で飲み続けると、肝機能の低下が早まり、腹水や肝不全、肝臓がんなどのリスクが高まります。
実際、飲酒をやめられずに体調悪化と入退院を繰り返し、重症化していくケースも少なくありません。
一方で、肝硬変が進行してからでも断酒を決意し、治療を続けることで、告げられた余命より長く生存できた例も多数あります。
余命がどのくらいかを一概に示すことはできませんが、飲酒を続ける場合と断酒を続ける場合では、経過に大きな差が出る可能性があります。
肝硬変と診断された時点で、できるだけ早く断酒に取り組むことが重要です。
肝硬変の末期症状は?
肝硬変の末期症状では、主に以下のような症状が見られます。
- 黄疸
- 腹水・浮腫
- 出血傾向
- 食道・胃静脈瘤破裂
- 肝性脳症
- 全身の倦怠感
これらの症状が出た場合でも、早めに治療を行うことで改善が期待できる場合があるため、異変を感じたら早めに医療機関へ相談しましょう。
まとめ
肝硬変の寿命は、腹水が溜まった状態の非代償性肝硬変では約2年とされています。
ただし病状の違いや腹水・合併症の有無によって見通しが変わるため、あくまでも統計上の目安として考えると良いでしょう。
適切な治療と規則正しい生活を続けることで、寿命を延ばせる可能性があります。
医師と相談しながら、今できる治療に向き合っていきましょう。
新宿トミヒサクロスクリニックでは、日本肝臓学会専門医による肝臓疾患の検査・診断・治療を行っています。
患者様一人ひとりの病態に応じた治療が可能なため、肝硬変にお悩みの方はぜひ当院までご相談ください。




