肝硬変で起こるかゆみの症状の特徴は?原因や治療法についても解説
皮膚に湿疹や赤みがないのにしつこいかゆみが続いている場合、それは単なる乾燥やアレルギーではなく、肝硬変を含む肝臓の病気が関係している可能性があります。
肝硬変によるかゆみは、かいても治まらない、夜に強くなる、かゆみ止めが効きにくいといった特徴があり、生活の質を大きく下げる原因になるため注意が必要です。
この記事では、肝硬変で起こるかゆみの症状の特徴について詳しく解説します。
かゆみの原因や治療法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
肝硬変で現れるかゆみの症状の特徴

肝硬変では、かゆみの症状が現れることがあります。このかゆみには、以下のような特徴があります。
- 見た目に異常がない
- かいても治まらない
- 全身にかゆみが生じる
- かゆみ止めが効かない
- 夜間にかゆみが悪化する
ここでは上記5つの特徴についてそれぞれ解説します。
見た目に異常がない
肝硬変によるかゆみは、皮膚に赤みや発疹が出ない特徴があります。
虫刺されや湿疹、アトピー性皮膚炎などでは、赤く腫れたりブツブツが現れたりと、外から見て異変が分かる場合がほとんどです。
一方で、肝硬変が関係するかゆみは皮膚表面にほとんど変化がなく、周囲からは気づかれにくい傾向があります。
見た目に異常がないかゆみは、内臓の不調が関係している可能性があるため、早めに医療機関を受診しましょう。
かいても治まらない
かいてもかいても、かゆみが軽くならないことも大きな特徴です。
一般的なかゆみは、軽くかいたり冷やしたりすると、一時的に落ち着くことがあります。
しかし肝硬変によるかゆみは、皮膚そのものが原因ではないため、外から刺激を与えても改善しにくい特徴があります。
むしろ、かき続けることで皮膚が傷つき、ヒリヒリとした痛みや別の皮膚トラブルを招くこともあるため注意が必要です。
かいても治まらないかゆみが続く場合は、自己判断で我慢せず、医療機関に相談しましょう。
全身にかゆみが生じる
特定の部位だけでなく、全身にかゆみが出る点も特徴です。
肝硬変によるかゆみは腕や脚だけでなく、背中やお腹など、全身に広がることがあります。
これは体内に溜まった『胆汁酸』が血液を通じて全身を巡り、皮膚の神経を刺激するために起こるものです。
広範囲に生じるかゆみが続く場合は、皮膚の病気だけでなく、肝臓の不調も視野に入れて考える必要があるでしょう。
かゆみ止めが効かない
肝硬変により起こるかゆみは、市販のかゆみ止めを使っても十分な効果を得にくい傾向があります。
ドラッグストアなどで購入できるかゆみ止めは、虫刺されや湿疹など、皮膚表面の炎症を抑える目的で作られています。
そのため、原因が体内にあるかゆみは、効果を感じにくい場合があるのです。
「塗り薬を使っても全然良くならない」と感じる場合は、肝硬変が原因のかゆみの可能性が考えられます。
自己判断でさまざまな外用薬を試すよりも、医師に相談し、原因に応じた治療や対処を検討することが大切です。
夜間にかゆみが悪化する
夜になるとかゆみが強くなりやすい点も、肝硬変によるかゆみの特徴の一つです。
日中は気が紛れていても、夜に横になるとかゆみが気になり、眠れなくなるというケースは少なくありません。
また、かゆみによる睡眠不足が続くことで疲労が溜まり、さらに体調を崩しやすくなる悪循環に陥ることもあります。
夜間のかゆみで目が覚めたり、寝つきが悪くなったりする場合は、生活の質にも大きく影響します。
「たかがかゆみだから」と軽く考えず、つらさを感じた時点で医師に相談し、適切な治療を受けましょう。
肝硬変でかゆみの症状が現れる原因・メカニズム

肝硬変でかゆみが生じる大きな原因の一つが、『胆汁酸』です。
胆汁酸は肝臓で作られ、胆嚢に蓄えられたあと、腸へ送られて消化をサポートします。
その後、腸から血管に再吸収され、肝臓へ戻るという流れを繰り返しています。
ところが、肝硬変によって肝臓や胆道の働きが低下すると、この循環が乱れ、胆汁酸が血液中に増えやすくなるのです。
血液中を流れる胆汁酸が皮膚に到達すると、皮膚にある末梢神経を刺激し、かゆみとして感じられるようになるというメカニズムです。
また、胆汁酸だけでなく、体内の神経伝達に関わる『セロトニン』『オピオイド』などの物質が影響している可能性もあります。
皮膚に原因が見当たらないかゆみが続く場合は、肝臓の病気が関係している可能性もあるため、早めに医療機関を受診して原因を特定しましょう。
肝硬変のかゆみの症状に対する治療方法

肝硬変によるかゆみは、市販薬だけで改善するのは困難なため、医師の処方薬が必要となります。
主な治療方法は以下の通りです。
- 抗ヒスタミン薬
- コレスチラミン(クエストラン)
- リファンピシン(抗結核薬)
- セロトニン受容体拮抗薬・抗うつ薬
- ナルフラフィン塩酸塩(レミッチ)
- 漢方薬
ここでは上記の治療方法についてそれぞれ解説します。
抗ヒスタミン薬
肝硬変によるかゆみに対して、まずは抗ヒスタミン薬が使われることがあります。
抗ヒスタミン薬は、アレルギーやじんましんなど、皮膚のかゆみに広く用いられている薬です。
ただし、肝硬変のかゆみの場合、抗ヒスタミン薬では十分な効果が得られない場合が多いです。
効果がない場合は、他の治療方法に切り替えることになります。
コレスチラミン(クエストラン)
コレスチラミンは、体内の胆汁酸を減らすことで、かゆみの軽減を目指す薬です。
この薬は腸の中で胆汁酸を吸着し、血管に再吸収されるのを防ぎ、便として排出しやすくします。
肝硬変では胆汁酸が体に溜まりやすく、それがかゆみの一因になるため、胆汁酸を減らすことで症状の改善が期待できるというメカニズムです。
一部の報告では、数日から1週間ほどでかゆみが和らいだ例もあります。
ただし、肝疾患のかゆみに対しては保険適用外となり、使用できるかどうかは医師の判断が必要となります。
リファンピシン(抗結核薬)
リファンピシンは、本来は結核の治療薬ですが、肝疾患のかゆみに使われることがあります。
この薬は体の中で胆汁酸の排出を助ける働きがあり、かゆみの原因となる成分を減らすことで症状の軽減につながる可能性があります。
海外の研究では、慢性的な胆汁の流れの障害に伴うかゆみに対して、リファンピシンの有効性が示されました。
こちらも保険適用外となる場合があり、すべての方に使える治療方法ではありません。
セロトニン受容体拮抗薬・抗うつ薬
かゆみの治療に、セロトニン受容体拮抗薬・抗うつ薬が使用される場合もあります。
セロトニンはかゆみを引き起こすため、その働きを調整する薬を使うことで、かゆみを和らげることが可能です。
5-HT3受容体拮抗薬のオンダンセトロンを使用することで、慢性胆汁うっ滞性掻痒症のかゆみが改善した報告もあります。
抗うつ薬として使われる薬の中にも、かゆみの軽減が期待されるものがありますが、すべての人に効果が出るわけではありません。
眠気や口の渇きなどの副作用が出ることもあるため、症状や生活への影響を考えながら、医師と相談して使用を検討します。
ナルフラフィン塩酸塩(レミッチ)
ナルフラフィン塩酸塩は、肝硬変に伴う強いかゆみに対して使われることがある薬です。
脊髄などにある『オピオイド受容体』に作用し、かゆみを抑える効果が期待できます。
慢性肝疾患のかゆみに対して使用された研究では、一定期間服用することで、かゆみの程度が軽くなったと報告されています。
ただし、すべての人に同じような効果が出るわけではありません。
また、かゆみが残ってしまうため補助療法が必要になるという見解もあります。
漢方薬
皮膚のかゆみに対する治療として、漢方薬が使われることもあります。
処方される漢方薬の種類としては、『当帰飲子』や『消風散』などが挙げられます。
当帰飲子はかさかさしたかゆみ、消風散はジュクジュクしたかゆみに有効です。
ただし、湿疹のようにジュクジュクしたかゆみに向いている消風散は、肝臓病のかゆみでは効果を感じにくい場合もあります。
漢方薬は徐々に変化を感じるケースが多く、効果の出方には個人差があります。
また、西洋薬と同様に、副作用が全くないわけではないため、自己判断での使用は避け、必ず医師や薬剤師に相談することが大切です。
しつこいかゆみは肝硬変を含む肝疾患の重要なサイン

原因のはっきりしないかゆみが長期間続く場合、肝硬変をはじめとする肝疾患が関係している可能性があります。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、自覚症状が出にくい臓器です。
そのため、かゆみのような一見すると関係なさそうな症状が、体からの重要なサインとなることがあります。
かゆみが現れる慢性肝疾患として、B型肝炎やC型肝炎、肝細胞がんなどが挙げられます。
これらの肝疾患で現れるしつこいかゆみは、生活の質を大きく下げる原因にもなるため注意が必要です。
眠れない日が続いたり、日中の集中力が落ちたりすることで、心身の負担が積み重なってしまう方も少なくありません。
気になる症状が続くときは、早めに消化器内科や肝臓内科を受診し、原因を確認することが大切です。
肝硬変のかゆみ以外の症状

肝硬変では、かゆみ以外にもさまざまな症状が現れることがあります。
代表的な症状の一つが『黄疸』です。
肝臓の働きが低下すると、体内で処理されるはずのビリルビンという色素が血液中に増え、皮膚や白目が黄色くなります。
あわせて尿の色が濃くなることもあるため、普段との違いに気づきやすい症状といえるでしょう。
また、肝臓の機能低下により、お腹に水がたまる『腹水』が生じることもあります。
お腹の張りや息苦しさ、食欲の低下を感じる場合は注意が必要です。
このほかにも、以下のような症状が現れる場合があります。
- 食欲不振・体重減少
- 便秘・下痢
- 血液凝固異常
- クモ状血管腫
- 手掌紅斑
- 女性化乳房
- こむらがえり
- 食道静脈瘤
- 肝性脳症
気になる症状が続く場合は放置せず、早めに医療機関へ相談しましょう。
肝硬変の疑いがある場合は検査を受けることが大切

肝硬変は初期段階では自覚症状が少なく、気づかないうちに進行することがあるため、定期的に検査を受けることが大切です。
肝硬変の主な検査方法として、以下の3つが挙げられます。
- 血液検査
- 画像検査
- 肝生検
ここでは上記3つの検査方法についてそれぞれ解説します。
血液検査
血液検査は、肝臓の働きや病気の進行度を知るための検査方法です。
肝臓の細胞が傷つくと、血液中の数値に変化が現れます。
代表的な項目として、肝細胞のダメージを反映する数値や、肝臓で作られるたんぱく質の量を示す数値などがあります。
また、肝臓が硬くなると血小板の数が減少するため、その数を示す数値が一定数を下回ると、肝硬変の可能性が高いと判断することが可能です。
定期的に血液検査を行うことで、肝臓の変化に気づきやすくなります。
画像検査
画像検査は、肝臓の形や硬さなどを直接確認できる重要な検査方法です。
腹部の超音波検査では、肝臓の表面がでこぼこしていないか、縁の形が変わっていないかを確認します。
超音波で見えにくい部分がある場合や、より詳しい評価が必要な場合には、CTやMRIが用いられます。
これらの検査では、肝臓の大きさのバランスや血管の状態、腫瘍の有無などを確認可能です。
画像検査を組み合わせることで、より正確な判断が可能になります。
肝生検
肝生検は、肝臓の組織を直接調べることで状態を確認する検査です。
線維化が進んでいる肝組織が確認できた場合は、肝硬変の確定診断が下せます。
ただし、近年は血液検査や画像検査の精度が向上しているため、肝生検が必要となる場面は限られてきています。
検査の必要性やリスクについては、医師と十分に相談したうえで判断することが大切です。
まとめ
肝硬変によるかゆみは、「見た目に異常がない」「かいても治まらない」などの特徴があり、夜間に悪化して眠れなくなることもあります。
市販のかゆみ止めは効かないため、体内の仕組みに働きかける薬や漢方薬の使用を検討する必要があります。
また、かゆみ以外に黄疸や腹水などの症状がみられる場合には、肝硬変が進行している可能性が高いため、早めに医療機関を受診しましょう。
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