小児のH. pylori(ヘリコバクター・ピロリ:Hp)除菌:小児、除菌、検診、test&treat、Helicobacter pylori
成人ではHp除菌治療は保険診療で可能ですが、小児には未だ認められていません。基本的に感染から浅い小児は無症状であり、Hp検査の窓口は検診が一つの手段となるわけです。
検診でHp陽性の小児がHp除菌へと進みます:test & treat
なぜ小児のHp除菌が必要なのでしょう
北海道医療大学学長の浅香正博先生によれば、成人の場合
Hp感染後、数週間〜数ヶ月でHp感染胃炎
↓
胃・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、萎縮性胃炎
萎縮性胃炎からは胃がんが発症してきます
浅香先生は20歳代後半で若年性胃がんが発症することを考慮し、中学生から20歳を迎えるまでに除菌治療を行うことの重要性であるとの考えを示しています。
私も発がんの予防という観点からはHp除菌に異論はありません
では小児のHp除菌では何が問題なのでしょう
*小児の診療ガイドラインでは無症状の児のtest & treatは推奨されていいません
*小児でクラリスロマイシン(CAM)耐性菌の増加している
*小児と保護者が除菌治療の目的を理解していないと治療を中断してしまう可能性がある
などが挙げられます。
Hp除菌の重要な窓口となる検診と治療、いわゆるtest & treatの実態はどうでしょう
兵庫医科大学ささやま医療センター小児科・奥田真珠美氏らによれば、
*実際、全国の自治体レベルで見てみると、中学・高校生においては、22件のHp検査&除菌の施行実態が確認されています
*今後の実施を検討している自治体もあることも確認されています
test & treatの実施時期ですが、保険の問題などを考慮すると、20歳前後が妥当と誰もが考えるのですが、この年齢の検診率は10〜20%と非常に低率で、検診としての目的が果たせないことになります。
そこで検診の対象として重要になってくるのが中学生となるわけですが、これまで申し上げたような問題がtest & treatの壁になるわけです。
第119回日本小児科学会学術集会のシンポジウムでは
中学生へのtest & treatの実施において
保険適用外であるため十分な説明と同意を得る必要がある
治療による副作用が出現した場合は小児科医の協力が不可欠である
小児ではCAM耐性が50%と効率であるため、1回で除菌を成功させるには薬剤感受性に基づいた適切なレジメンの選択が重要である
などが確認されています
私どものクリニックは保険診療が主体の医療機関ですので、小児のHp除菌治療は慎重でありますが、今後の小児医療、医療行政の動向によっては、小児のHp除菌に関わっていく可能性もあるのでしょう。
注意深く見守っていきたいですね。