肝硬変の出血傾向が起こる理由は?輸血が必要な状態や治療方法について解説
肝硬変が進行するとさまざまな症状が現れますが、その中でも注意したいのが『出血傾向』です。
鼻血が止まりにくい、歯茎から出血しやすい、あざができやすいといった症状は、肝硬変が関係している場合があります。
肝臓は血液を固めるために必要な成分を作る役割を担っているため、肝機能が低下すると出血しやすい状態になってしまうのです。
この記事では、肝硬変で出血傾向が起こる理由や症状の特徴について解説します。
具体的な治療方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
肝硬変とは

肝硬変とは、肝臓が慢性的なダメージを受け続けることで、肝臓の中に線維組織が増え、全体が硬くなってしまう病気です。
肝臓は再生能力が高い臓器で、多少の傷であれば修復できますが、肝炎やアルコールなどの影響が続くと修復が追いつかなくなります。
その結果、正常な肝細胞が減り、代わりに線維化が広がっていくのです。
線維組織が増えた肝臓は表面がでこぼこした形になり、内部の血液の流れや胆汁の通り道にも支障が出ます。
これにより、肝臓が本来担っている役割(体内の代謝・排泄・貯蔵、有害物質の解毒など)を十分に果たせなくなります。
その影響で、体調不良やさまざまな合併症が起こりやすくなってしまうのです。
また、肝硬変は初期の段階では自覚症状が出にくいことも特徴です。
気付かないうちに状態が悪化してしまうケースもあるため、肝臓に負担をかける生活習慣がある場合は、早めに検査を受けて肝臓の状態を確認することが大切になります。
肝硬変では出血傾向が起こることがある

肝硬変では、体の中で血を止める働きが弱くなり、出血しやすい状態になることがあります。
これが『出血傾向』と呼ばれる症状です。
この症状が起こることで、鼻血が出やすくなったり、歯茎からの出血が続いたり、少しぶつけただけであざができやすくなったりすることがあります。
こうした怪我の範囲に収まるものだけでなく、体内で起こる出血にも注意が必要です。
例えば、消化管の出血や食道静脈瘤からの出血などが起こると、重症化する恐れもあります。
日常生活の中で出血しやすくなったと感じる場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
出血傾向が起こるメカニズム
肝硬変で出血傾向が起こる主な理由として、『血小板の減少』と『血液を固める成分の欠乏』が挙げられます。
血小板は、出血が起きたときに最初に集まって血を止める働きをしますが、肝硬変ではこの数が減りやすくなります。
これは、肝臓で作られる血小板を増やすための物質(トロンボポエチン)が十分に作られなくなったり、脾臓に血流が多く流れることで血小板が分解されてしまったりすることが原因です。
さらに、肝臓は血液を固めるために必要な成分を作っていますが、肝硬変によって肝機能が低下すると、これらの成分の産生が追いつかなくなります。
その結果、出血した際に血が固まりにくくなり、止血に時間がかかる状態になるのです。
このように複数の要因が重なることで、出血しやすい状態になります。
肝硬変の出血傾向に対する治療方法

肝硬変の出血傾向に対する基本的な治療として、不足している凝固因子・血小板を補う治療が挙げられます。
この治療により出血のリスクを下げられますが、出血を完全に防げるわけではありません。
そのため、実際に出血が起きた場合には速やかな対応が必要となるケースもあります。
ここでは肝硬変の出血傾向に対する治療方法について解説します。
不足している凝固因子・血小板を補う治療
肝硬変の出血傾向に対する基本的な治療は、不足している凝固因子や血小板を補うことです。
肝硬変では凝固因子や血小板の減少によって、出血した際に血が止まりにくくなってしまいます。
そのため、不足している凝固因子や血小板を直接補充することで、出血傾向の改善が期待できます。
ただしこの治療はあくまでも出血傾向に対する治療であり、肝臓そのものの機能が回復するわけではないため、効果は一時的なものにとどまる点には注意が必要です。
出血リスクが高い状況や検査で異常が見られる場合に、必要に応じて行われます。
実際に出血が起こっている場合の緊急対応
実際に出血が起きた場合には、迅速な対応が必要になります。
緊急時には輸液・輸血を行い、そのうえで内視鏡検査で出血源を確認し、原因に応じた止血処置が進められるという流れになる場合が多いです。
消化管が出血源で、かつ出血量が多い場合には、チューブを挿入してバルーンを膨らませて圧迫止血をします。
出血量が少ない場合は、Oリング(ゴムのリング)を使って止血処置を行います。
また、胃静脈瘤の破裂による出血の場合は、内視鏡を使用して組織接着剤で止血する方法がとられる場合も多いです。
実際に出血が起きた場合には、このように状況に応じた治療が行われます。
食道・胃静脈瘤による出血への治療
肝硬変が進行すると、食道や胃に静脈瘤ができやすくなります。
静脈瘤は時間とともに大きくなり、破裂すると大量出血を起こす恐れがあるため、出血する前に対策を行うことが重要です。
そのため、静脈瘤が見つかった段階で、出血の予防を目的とした治療が行われることがあります。
具体的には『内視鏡的硬化療法』や『結紮術』などの治療が行われる場合が多いです。
これらは静脈瘤の血管内または周囲に硬化剤を注入したり、静脈瘤自体をOリング(ゴムのリング)で止めたりすることで、静脈瘤の血流を遮断する治療方法です。
状況によっては、薬物療法(βブロッカー)によって血管への負担を減らす治療を行う場合もあります。
いずれもすべての人に適応できるわけではないため、肝臓や全身の状態に適した予防方法を医師から提案してもらうことが大切です。
肝硬変の分類と症状

肝硬変は病気の進行具合によって『代償性肝硬変』と『非代償性肝硬変』の2種類に分類され、それぞれ症状の現れ方が大きく異なります。
初期段階では肝臓の働きがある程度保たれているため、自覚症状はほとんどありません。
しかし、症状の進行によって肝臓の機能が低下してくると、目に見える症状が現れるようになります。
ここでは代償性肝硬変と非代償性肝硬変で現れる症状についてそれぞれ解説します。
代償性肝硬変
代償性肝硬変とは、肝硬変の初期段階にあたる状態です。
肝臓の一部の細胞は障害を受けているものの、残っている肝細胞が働きを補っています。
この段階では肝臓としての機能が保たれているため、日常生活に大きな支障が出ることはほとんどありません。
そのため、自覚症状がないまま経過するケースが多い傾向にあります。
人によっては、疲れやすさやだるさ、食欲が低下するといった軽い症状を感じることがありますが、これらは疲労や体調不良と区別がつきにくく、肝硬変が原因だと気付かれないことも少なくありません。
血液検査などで肝機能の数値に異常が見つかり、初めて指摘される場合も多いです。
肝硬変の進行を防ぐためには、この段階で適切な治療や生活習慣の見直しを行うことが重要になります。
非代償性肝硬変
非代償性肝硬変は、肝硬変が中期から末期まで進行し、肝臓の機能が十分に保てなくなった状態です。
残っている肝細胞だけでは働きを補いきれなくなり、体にさまざまな症状が現れ始めます。
症状の現れ方や重さには個人差がありますが、放置すると肝不全や肝がんへと進行する可能性があるため、医療機関での継続的な治療と経過観察が必要になります。
黄疸
黄疸は、非代償性肝硬変でよくみられる症状の一つです。
皮膚や白目の部分が黄色くなるのが特徴で、これは血液中にある『ビリルビン』と呼ばれる黄色い色素が原因で起こるものです。
ビリルビンは古くなった赤血球が破壊される際に生じ、本来は肝臓で処理されて胆汁として体外へ排出されます。
しかし、肝臓の機能が低下するとこの処理がうまくいかず、血液中にビリルビンが溜まってしまいます。
その結果、皮膚や目が黄色くなったり、尿の色が濃くなったりする黄疸が起こるのです。
腹水
腹水とは、お腹の中に水分が溜まる症状です。
肝硬変によって肝機能が低下すると、血液中の水分バランスを保つ働きが弱くなり、腹部に水が溜まりやすくなります。
腹水が少量のうちは下腹部が少し張る程度ですが、量が増えるとお腹全体が膨らみ、息苦しさや食欲不振を感じることがあります。
クモ状血管腫
クモ状血管腫は、皮膚の表面に赤い点ができ、その中心から細い血管が放射状に広がる症状です。
主に顔や首、胸、腕などに現れることが多く、大きさは数ミリ程度のものがほとんどです。
肝硬変によってホルモンバランスが崩れることが原因と考えられており、見た目の変化はあるものの、痛みやかゆみはありません。
クモ状血管腫自体は基本的に特別な治療は必要ありませんが、肝硬変が進行しているサインであるため、放置しないようにしましょう。
手掌紅斑
手掌紅斑は、手のひらの親指や小指の付け根部分に赤い斑点が現れる症状です。
手のひら全体が赤くなることは少なく、特定の部分に赤みが出るのが特徴です。
押すと一時的に赤みが消え、手を離すと再び赤くなるという特徴があります。
痛みやかゆみを伴うことはほとんどありませんが、非代償性肝硬変にみられる代表的な症状の一つです。
女性化乳房
女性化乳房は、男性の乳房や乳首が大きくなる症状です。
肝臓には体内のホルモンのバランスを整える働きがありますが、肝機能が低下すると女性ホルモンの分解がうまく行われなくなります。
その結果、体内に女性ホルモンが溜まりやすくなり、乳腺が刺激されて発達してしまいます。
この症状は見た目の変化が分かりやすいため、本人や周囲が異変に気付きやすい点が特徴です。
女性化乳房が見られた場合は、早めに医療機関で相談しましょう。
羽ばたき振戦
羽ばたき振戦とは、自分の意志とは関係なく手や指の震えが起こる症状です。
肝臓の解毒機能が低下し、体にとって有害な物質が処理されずに溜まることが主な原因とされています。
特にアンモニアが血液中に増えると脳や神経に影響を及ぼし、筋肉の動きをうまく調整できなくなります。
また、羽ばたき振戦は肝性脳症の初期サインとして現れることもあるため、見逃さないことが重要です。
手の震えに気付いた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
こむらがえり
こむらがえりは、ふくらはぎなどの筋肉が急に強く縮み、強い痛みを伴う症状です。
肝硬変になると体内のミネラルのバランスが乱れたり、血液の浸透圧が低下したりすることがあります。
その結果、突然足がつるといった症状が起こりやすくなります。
頻繁に起こる場合は医療機関の受診を検討しましょう。
食道静脈瘤破裂
食道静脈瘤破裂は、非代償性肝硬変の中でも特に注意が必要な症状です。
肝硬変が進行すると、肝臓に血液が流れにくくなり、肝臓へ向かう血管の圧力が高くなります。
その結果、血液の逃げ道として食道や胃の静脈が膨らみ、静脈瘤が形成されます。
この静脈瘤が大きくなると、突然破れてしまい、大量出血を起こすことがあるのです。
大量出血は命に関わる状態になるため、早急な医療対応が必要となります。
肝性脳症
肝性脳症は、肝臓の解毒機能が大きく低下することで起こる症状です。
本来、肝臓は体内で発生する有害な物質を処理していますが、肝硬変が進行するとその働きが弱くなります。
その結果、アンモニアなどの物質が蓄積され、脳に影響を及ぼすことがあるのです。
初期段階では、睡眠リズムの乱れや怒りっぽさなどの症状が現れることがあり、進行すると、判断力や集中力の低下、羽ばたき振戦などが見られるようになります。
重度まで進行すると錯乱状態や昏睡に至ることもあるため、定期的な健康診断で早期発見・早期治療に努めましょう。
肝硬変に気づくためには定期的に肝機能検査を受けることが大切

肝硬変は、初期段階では自覚症状がほとんど現れないことが多く、気付いたときには進行しているケースも少なくありません。
そのため、症状の有無だけで判断するのではなく、定期的に肝機能検査を受けて肝臓の状態を確認することが重要です。
基本的には血液検査によって肝臓の状態を確認できます。
B型肝炎やC型肝炎、自己免疫性肝炎など、肝硬変の原因となった病気も調べることが可能です。
ほかにも超音波検査やCT検査などの画像検査を併用することで、肝硬変の早期発見につながります。
検査で異常が見られなかった場合も安心せず、定期的に検査を受けるようにしましょう。
まとめ
肝硬変で起こる出血傾向は、血液を固める成分が十分に作られなくなったり、血小板が減少したりすることが主な原因です。
肝硬変は初期段階では自覚症状がほとんどありませんが、進行すると日常生活の中でも出血しやすさを自覚する場面が増えることがあります。
食道静脈瘤の破裂など、大量出血につながるケースもあるため注意しましょう。
このような症状を防ぐためには、定期的に検査を受け、早い段階で肝硬変の進行を抑える治療を行うことが大切です。
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