肝硬変で発熱が起こる原因は?受診目安や悪化防止対策について解説
肝機能低下を指摘された方、肝硬変のある方の中には、「熱が出るのはなぜだろう」「風邪なのか肝臓の影響なのか分からない」と不安に感じる方も少なくないでしょう。
肝臓の機能低下や免疫力の低下により、発熱が起こることがあります。
発熱の原因は一つではなく、肝臓そのものの炎症や感染症、合併症などが関係している場合もあるため注意が必要です。
この記事では、肝硬変や肝炎などの肝疾患で熱が出る原因について詳しく解説します。
受診の目安や肝硬変の悪化防止対策などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
肝硬変・肝炎などの肝疾患では発熱が起こるケースがある

肝硬変や肝炎などの肝疾患では、発熱がみられることがあります。
発熱の原因は一つではなく、肝臓の慢性的な炎症や免疫力の低下が関わっていると考えられています。
まず考えられるのが、肝炎による慢性的な炎症です。
肝炎では肝細胞が傷つき、その修復と破壊が繰り返される状態が続きます。
このような炎症が長く続くと、体は異常を察知して免疫反応を起こし、結果として発熱や倦怠感といった全身症状が現れることがあるのです。
もう一つ重要なのが、感染症の影響です。
肝硬変が進行すると、肝臓が担っている免疫の働きが弱まり、細菌やウイルスに対する抵抗力が低下します。
そのため、肺炎や尿路感染症、胆道感染症などを起こしやすくなり、それに伴って発熱が出ることがあります。
特に腹水を伴う肝硬変では、腸内の細菌が腹水に移動して感染を起こす『特発性細菌性腹膜炎』にも注意が必要です。
このように肝疾患でみられる発熱は、肝臓の炎症そのものや感染症が関与している可能性があります。
発熱が続く場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。
発熱が起こる肝炎の種類

発熱が起こる肝炎の種類として、主に以下の3つが挙げられます。
- 急性肝炎
- ウイルス性肝炎
- アルコール性肝炎
ここでは上記3つの症状の特徴についてそれぞれ解説します。
急性肝炎
急性肝炎は肝臓に急に強い炎症が起こる病気で、発熱を伴うことが多いのが特徴です。
原因はウイルス感染だけでなく、薬の影響や自己免疫の異常、アルコールの摂取などさまざまです。
症状としては、発熱に加えて全身の倦怠感、食欲不振、吐き気、腹痛、黄疸などがみられます。
多くの場合、安静に過ごして肝臓を休ませることで自然と回復していきますが、約1~2%で劇症化が起こることがあり、入院が必要になることもあります。
発熱が続く、食事や水分がとれない、強い倦怠感で動けないといった状態がみられる場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。
ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎も、発熱がみられる肝炎の一つです。
肝炎ウイルスに感染すると、体の中で炎症反応が起こり、その影響で発熱や倦怠感、食欲不振など、風邪に似た症状が現れることがあります。
感染してすぐに症状が出る場合もあれば、ほとんど自覚症状がないまま進行するケースもあります。
特にB型肝炎では、発症時に発熱や全身の不調がみられることが多いです。
一方、C型肝炎は自覚症状が出にくいのが特徴です。
しかし、炎症が長く続くと、肝臓への負担が積み重なり、慢性肝炎から肝硬変、肝がんへと進行する可能性があります。
さらに自己免疫性肝炎でも、免疫の異常によって肝臓に炎症が起こり、微熱や関節の違和感、倦怠感が続くことがあります。
発熱が軽度でも長引く場合は、肝疾患が背景にあることも考えられるため、早めに検査を受けることが大切です。
アルコール性肝炎
アルコール性肝炎は、長期間にわたる大量の飲酒が原因で肝臓に炎症が起こる病気です。
初期の段階では目立った症状が出にくいこともありますが、炎症が進むと発熱や強い倦怠感がみられることがあります。
特に37度台の微熱が続く場合は、アルコール性肝炎の初期症状の可能性も考えられるでしょう。
肝臓がアルコールの処理に追われる状態が続くと、肝細胞が傷つき、正常な働きができなくなります。
その結果、食欲が落ちたり、右上腹部の痛みや違和感が出たりすることがあります。
炎症が強くなるにつれて発熱が目立つようになり、黄疸や腹部の張りなど、より分かりやすい症状が現れることも少なくありません。
アルコール性肝炎は進行すると肝硬変へ移行する可能性があるため、発熱や体調不良が続く場合は注意が必要です。
飲酒習慣がある方で、微熱やだるさが長引く場合は、早めに医療機関で相談することが望ましいでしょう。
肝硬変と発熱の関係性

肝炎や肝障害が進行すると、肝臓が硬くなる『肝硬変』になります。
肝硬変でも、病状の進行に伴って発熱がみられる場合があります。
ここではその原因について詳しく解説します。
代償性肝硬変と非代償性肝硬変の症状の違い
肝硬変は、症状によって『代償性肝硬変』と『非代償性肝硬変』に分けられます。
代償性肝硬変は、まだ肝臓の機能がある程度保たれているため、自覚症状がほとんどないことも珍しくありません。
この段階では発熱が目立つことは少なく、健康診断や血液検査で偶然見つかるケースが多い傾向にあります。
一方、非代償性肝硬変になると、肝臓の働きが十分に保てなくなり、段階的に症状が現れ始めます。
初期には微熱や全身の倦怠感、疲れやすさ、食欲不振といった体調の変化がみられることが多いです。
これらは日常での疲労や体調不良と区別がつきにくいため注意が必要です。
さらに病状が進むと、皮膚や白目が黄色くなる黄疸、お腹に水がたまる腹水、意識がぼんやりする肝性脳症などが起こることがあります。
肝硬変になると感染症リスクが高まる
肝硬変になると、感染症が原因で発熱が起こることがあります。
肝臓は体内に入った細菌や不要な物質を処理する役割を担っていますが、肝硬変ではこの働きが低下します。
また、血液の流れが変化することで体の免疫機能も弱まり、健康な状態に比べて細菌感染を起こしやすくなるのです。
具体的には肺炎などの呼吸器感染症や尿路感染症、胆道感染症などが起こりやすく、それに伴って発熱が現れることがあります。
感染症による発熱は必ずしも強い症状を伴うとは限らず、微熱や倦怠感だけで始まる場合もあります。
肝硬変のある方の場合は、軽い発熱であっても背景に感染症が隠れている可能性があるため、経過を注意深く見ることが大切です。
特発性細菌性腹膜炎など重篤な合併症による発熱
非代償性肝硬変で腹水を伴う場合、特に注意が必要なのが特発性細菌性腹膜炎です。
この合併症は、腸の中にもともと存在する細菌が腹水に移行して感染症を起こすもので、発熱や腹部の違和感が現れるのが特徴です。
腹膜炎と聞くと強い腹痛を想像しがちですが、特発性細菌性腹膜炎の場合は症状が軽く、発熱だけが目立つこともあります。
このような発熱は見逃されやすく、対応が遅れると全身状態が悪化することがあります。
特発性細菌性腹膜炎は、早期に対応することで重症化を防げる可能性があるため、腹水がある方で発熱がみられる場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。
原因不明の発熱が起こる場合もある
難治性の腹水を伴う非代償性肝硬変では、特別なきっかけがなくても発熱がみられるケースがあります。
このような発熱は、一時的に自然と治まることもありますが、数日以上続く場合には注意が必要です。
原因不明の発熱が続くと、体力の低下や全身状態の悪化につながることがあります。
さらに、腎臓や肺など他の臓器に負担がかかり、状態が悪化していく場合もあります。
肝硬変のある方に発熱がみられた場合は、自己判断せず、体調の変化を医師に伝えることが大切です。
肝疾患での受診目安

肝疾患がある場合、発熱や体調不良があっても「様子を見てよいのか」「すぐ受診すべきか」で迷うことがあるでしょう。
ここでは肝疾患での体調不良の受診目安について解説します。
症状が強い場合はすぐに受診する
次のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
- 38度以上の発熱が続いている
- 強い倦怠感があり、動くのがつらい
- 食欲がなく、食事や水分がほとんど摂れない
- 尿の色が濃い、または尿量が明らかに少ない
- 皮膚や白目が黄色っぽく見える
これらの症状は急性肝炎の悪化や感染症の合併、肝機能の低下などが関係している可能性があります。
急性肝炎は自然に回復することもありますが、重症化する例もあるため、自己判断で様子を見るのは避けた方がよいでしょう。
肝硬変がある場合の受診目安と薬の使用について
肝硬変がある方は、発熱や倦怠感などの症状が出たときに、風邪なのか肝硬変に由来した体調変化なのかを自分で判断するのが難しい場合があります。
そのため、軽い症状であっても注意が必要です。
肝硬変では体の免疫機能が低下しており、感染症にかかりやすく、風邪のような症状が肺炎などに進行することもあります。
特に、発熱や体調不良が数日から1週間以上続く場合は、早めに医療機関へ相談することが大切でしょう。
また、肝硬変のある方は薬の使い方にも注意が必要です。
市販の解熱鎮痛薬や風邪薬の中には、肝臓に負担をかける成分が含まれていることがあります。
発熱があるからといって自己判断で薬を使用すると、肝機能の低下を招く可能性も否定できません。
風邪の症状に見えても、実際には肝硬変に伴う炎症や感染症が原因であるケースもあるため、自己判断は避けましょう。
発熱や倦怠感、食欲不振などの症状がみられた場合は、まず主治医に連絡し、現在の症状や経過を伝えることが大切です。
これまでの治療内容や検査結果を把握している主治医であれば、状況に応じた判断や対応をしてくれるでしょう。
肝硬変の悪化・発熱を予防するための対策

肝硬変の悪化や発熱を予防するための対策として、以下が挙げられます。
- 便通コントロール・尿路感染症対策をする
- アルコールを辞める
- 肝臓に負担のかかる薬物やサプリメントの使用に注意する
- 感染症対策のために定期的に予防接種を受ける
ここでは上記5つの対策についてそれぞれ解説します。
便通コントロール・尿路感染症対策をする
肝硬変の悪化を防ぐためには、便通コントロールがとても重要です。
便が腸内に長くとどまると、アンモニアを発生させる細菌が増えやすくなり、体内に吸収されて全身の不調や発熱の原因になることがあります。
毎日十分な量の排便があり、硬すぎない便を保つことを意識しましょう。
また、便の色にも注意が必要です。黒っぽい便が出た場合は消化管からの出血が起こっている可能性があります。
いつもと便の色が違うと感じたら、早めに医師に相談しましょう。
あわせて、尿路感染症の予防も大切です。
膀胱炎などの尿路感染症は発熱の原因になりやすいため、トイレに行くのを我慢しないようにしましょう。
夜間のトイレを避けるために水分を極端に控えたり、尿意を我慢したりすると感染のリスクが高まります。
日中を中心に適度に水分をとり、自然な排尿習慣を心がけることが発熱予防につながります。
アルコールを辞める
アルコールは、肝臓に大きな負担をかけます。
肝硬変まで進行した場合、肝機能は通常よりも大きく低下しています。
少量のアルコールでも負担が大きくなるため、節酒や休肝日を作るといった対策ではなく、一滴もお酒を飲まないのが理想です。
お酒を飲み続けると予後が悪くなる傾向にある一方、長期間の完全断酒に成功すれば、肝臓の再生が期待できるケースもあります。
自分自身だけではアルコールを断つのが難しい場合は、医師の他にも断酒会やAA(アルコホーリクス・アノニマス)などの自助グループで相談するのも有効です。
肝臓に負担のかかる薬物やサプリメントの使用に注意する
肝硬変のある方は、薬やサプリメントの使い方にも注意が必要です。
一部の市販薬や健康食品には、肝臓に負担をかける成分が含まれていることがあります。
自己判断で使用すると、肝機能が低下したり、体調悪化や発熱のきっかけになることもあります。
発熱がある場合でも、市販の解熱鎮痛薬を安易に使うのは避けましょう。
新しく薬やサプリメントを使うときは、必ず主治医や薬剤師に相談することが大切です。
感染症対策のために定期的に予防接種を受ける
肝硬変では免疫の働きが弱くなり、感染症にかかりやすくなります。
感染症は発熱の大きな原因となるため、定期的に予防接種を受けることが大切です。
重症化しやすい感染症を防ぐことで、発熱や体調悪化のリスクを下げられます。
また、日常生活でも手洗いやうがいを心がけ、生の魚介類など感染リスクの高い食品を避けることが大切です。
風邪のような症状が長引く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
肝硬変でみられる発熱は、肝臓の炎症や免疫力の低下、感染症、重い合併症など、さまざまな要因が関係しています。
特に非代償性肝硬変では、微熱や倦怠感から始まり、病状の進行とともに発熱が目立つことがあります。
発熱が続く場合や、食欲不振・強い倦怠感・黄疸などを伴う場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。
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